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有形無形の融合

今までにない「ふたり単位」のお墓を作ることにした結果、お参りの新しいスタイルも実現できました。有形と無形の融合です。そして、海を越えて目指す想いも抱くようになりました。
證大寺・住職 井上城治

想い合うふたりを救う

「俺が死んだら、あいつは入るところがないんだよ。」
そんな嘆きや悩みを数年前からよく耳にしていました。

内縁関係だけでなく、籍を入れられない事情のふたりが今増えています。
多いのが高齢者の再婚です。元の配偶者の遺産や家族の問題から、籍を入れない、入れられない。
さらに、国籍や宗教の違いを持つカップル、特殊な間柄のカップルも増えています。
こうしたふたりは、
「一緒に暮らすまでは自由にできるけど、死んだら一緒になれない。入れてくれるお墓がないから。」となるケースが殆どです。

そうした今時のふたり事情を救えるような、従来の家族墓とは違う、新しいタイプのお墓の必要性を感じていました。

当初、樹木葬を考えていたところ、ある建築家の方とのご縁を得ました。
その方の登場により、これまでにない発想と設計手法で「ふたり単位のお墓」、それも、有形無形を作る展開へと向かったのです。

「ふたり単位」だから

その建築家が、一級建築士の押尾先生です。
先生の想いはこういうものでした。

「ふたり単位のお墓。一人が入れば、一人が残ります。
ならば残された相手が入るまでの時間と想いを大切にしないと。お墓というモノだけでなく、ここで故人と出会えるような『コト』も設計しましょう!」

私は完全に共感しました。
それがお参りであり、供養だからです。
證大寺・霊園の「魂」だからです。

こうして、有形無形の「ふたりのお墓」設計に取り掛かりました。

潤いの空間、抱きしめられるお墓

まず、モノとなるお墓の設計について、押尾先生はこんな構想を持たれていました。
「イメージしたのは、ロンドンのケンジントン公園にあるダイアナ妃の記念碑『ダイアナ・メモリアル・ファウンテン』。噴水と流れ落ちる水の流路で出来ていて、癒し・潤い・みずみずしさがある。&安堵には、乾いた石の空間ではなく、潤いある空間を目指しました。お参りの時間が、かけがえのないひとときになるように。」
こうして、瑞々しい緑と潤いの空間が作られました。
故人を偲びつつ心癒される時間が、そこには存在します。
さらに先生には意図がありました。
「その空間に置くお墓は、故人を思い浮かべられる大きさで、触り心地よく、抱きしめられるように。入られる方の顔が違うように、表情が少しずつ違う素材で。」
墓石は、手触りの良い白い大理石で、故人が居るかのような高さの、丸みのある筒型に作られました。
石の一つ一つが、微妙に異なる肌合いと色調を持ちます。
潤いの空間で、亡きパートナーを想い、語りかけ、抱きしめられるお墓「&安堵」は完成しました。私自身が予てより望んでいた、「身体性あるお墓」の実現でもありました。
次に私達は、お参りの新しいシステムへ着手しました。

対となる「手紙処」

ふたりの想いを通い合わせる、お参りの新しいシステムとは?
その糸口が、手紙でした。

実は私自身、手紙には多くの思い出と経験、そして深い感慨があります。
父からのラストレターで人生の谷間を這い上がり、手紙供養、手紙講座など證大寺で開催するようになり、今では「手紙寺」と呼ばれるようになりました。
供養とともに、手紙は證大寺の魂です。

そうした背景より、「手紙処(てがみどころ)」なる場が設計されました。
押尾先生の言葉を借りると、こうです。
「お参りという行為の延長線上に、故人と言葉を交わせる場所を。そこで故人と向かい合い、心静かに手紙を書く。ひいては自分自身と向き合うためにも。」

手紙を書くことは、故人を想うだけではありません。
過去や今の自分の気持ちを整理し、自分を照らす鏡になるものです。
故人を通じて自分を見つめ、故人と通い合い、癒される・・・。
まさに「供養の姿」です。

こうして「&安堵」に対となる「手紙処」が出来上がりました。
そこは、自然の木を生かした、モダンで落ち着きある空間。
ペンを取れば、亡きパートナーとの思い出が自然に溢れ出ます。
寒い時期には暖炉が焚かれ、揺らぐ炎に偲ぶ姿が浮かぶようです。

書かれた手紙は、お焚き上げで浄土のお相手に届きます。

国を超えて、海を越えて

ふたり単位のお墓「&安堵」は、新しいお参りのスタイルを体現する「手紙処」と対となって完成しました。
それは、有形と無形の融合として完成したのです。
システムも、間柄・国籍・宗教・様々な事情を問わずに一緒に入れるようにしました。

さらに嬉しいことに、完成した2017年、&安堵の広告は永代供養墓として初めて「朝日広告賞」を受賞、手紙処もアメリカ・Faith&Formという専門誌開催のアワードで賞を取りました。
従来のお墓の概念を超えて、国境や文化までも超えて、認められたのです。
抱きしめる。手紙を書く。
この行為に、国の違いも言葉の違いもありません。

&安堵を、手紙処を、いつか海を越えて広げて行けたらと思っています。
世界中の「想い合うふたり」のためにも・・・。